先人の想いを未来へ継承するために

先人の想いを未来へ継承するために

Q1.
この地域の資源や食材に惚れ込んで、東京から移住してきました。築100年くらいの古い家を買って修復して住んでいます。昔は原材料が調達できていたということに興味をもったのですが、いまはどんな可能性があるのでしょうか。
A1. (原田)
古い家は丈夫で長持ちです。既に100年持っているなら、平気でいまから100年もつと思います。材料を選ぶときの重要なポイントはやはり、丈夫で長持ちする素材を選ぶということです。
たとえば、藁も餅米の藁のほうが昔から丈夫です。それは僕らが考えたんじゃなくて、先代から伝わってきました。竹もそうで、赤土山でとれた竹のほうが丈夫とか、伝えがしみついて、ぼくら当たり前であまり言葉にしないけれど。海藻もそうです。海藻は東北や北海道など、寒いところのほうがよいわけです。ものを選ぶときには長持ちするかしないかで選ぶ。逆にそういう目で見ると簡単に選べます。
こういう蔵、少しずつ傷みはあるけれど、手を入れながらもたせることができます。代々受け継げる。なんとかハウスはいくら手を入れても長持ちしません。いまの仕組み、ローンが終わったときに家も終わる。子どもはまた家を建てなくてはならない。すごく負荷がかかる仕組みだと思います。
いっぺんにはできないと思うんですけれど、素材がなければ探す、近くから取り寄せる。なければつくればいい。餅米も建物のためにつくる。ついでにお餅も食べられる。そういう風にすれば、長い目で見て、ラクなほう、無理のない方法にいくんじゃないかと思うんですね。僕は左官しか知らないけれど、遠くから材料が来なくても普通にご飯が食べられる、問題ない、という町が素敵だな、と思うところです。
A1. (小林)
何か行動を起こすというよりも、好きだという姿勢を見せていたら、すなおに好きだということを伝えていれば、自然と多くの人が共感するのでは、と自分が思っています。
Q2.
黒磨きのコツを教えてください。
A2. (原田)
僕は黒磨き上手じゃないですけど、コツは毎日やること。当時は普通にご飯食べるみたいに黒磨きをやってたんじゃないかと思う。秋口と春先でやり方も違うし、毎日やってればたくさんやれば、上手になります。
A2. (挾土)
コツなんてなくて、全部難しいんですよね。なにもかも難しい。石灰の質や道具によっても違うし。自分流のタイミングをひたすら勉強するしかない。全部がコツ。コツなんて言ってるレベルじゃない、それくらい難しい。
Q3.
どうしても気温が低い時期にやらなくてはならないことがあると思うけれど、左官の仕事は、冬はどうするのでしょうか?
A3. (原田)
日田の伝建地区の補修は、4月に議会にかかって6月にOKが出ます。そこからのスタートとなって、壁をはいだり大工さんが梁を直したりして、左官が始めるのが11月とか12月になります。それで3月には終えなくてはならない。でも氷点下になったりして、支障が出ました。そこで発注を先送りにして4月スタートにするという方法と、2カ年に分けて、1年目は荒壁をつけて終わり、乾燥させて次の年に仕上げるという方法を交渉しました。ぼくら下請けで元請けのいうこときかなくてはならないんですが、元請けをスタートさせるのは行政です。だから行政までいって交渉するんです。言うと、わかる人はわかってくれます。ものづくりが本末転倒にならないように、何が大事かを考えて、できんときはできんといわなくてはならないと思います。