〔レポート〕九州石灰工場 見学研修会を開催しました
2022年11月のオンライントーク「左官はどうやって土壁の材料を確保するのか」で、左官材料の現場を実際に見に行こう、情報を集めようという話が出ました。その第一弾として九州の石灰工場を23人の参加者が訪ねました。
1日目は田川産業(福岡県田川市)、2日目は田島貝灰工業所(福岡県柳川市)、3日目が丸京石灰(大分県津久見市)というルートです。
あいだに福岡城潮見櫓の復元現場(施工:荒木新二)と下之橋大手門(施工:荒木富士男)の見学、櫛田神社灯明殿での懇親会、荒木富士男邸見学、柳川藩主立花邸御花での見学と鰻の昼食、温泉では左官に関する樹脂の勉強会(アイプラス竹永孝行講師)、双葉荘での地獄蒸し料理の夕食、大分料理の昼食などを挟み、欲張りな講習会になりました。
大分・日田の原田進さんのコーディネートに感謝です。
田川産業は石灰鉱山が近くにあります。深さ10メートルの土中窯でこぶし大に砕いた石灰岩を800〜900度で塩焼きしています。この方法で石灰をつくっているのは数カ所しか残っていません。
そうしてできた石灰に水を加えて発熱する消化反応を起こさせてできるのが消石灰、これが通常目にする石灰で、漆喰の材料です。
同社にはライミックスというタイル状の「焼かずにつくるしっくいセラミック」(壁・床用)がありますが、硬化させる工程で石灰の焼成時に出る二酸化炭素を利用していて、環境負荷軽減になっているのが印象的でした。
田川産業
既調合漆喰を開発したメーカー。創業100年、守るべきものは守りつつ、常に新しい取り組みに挑戦する姿勢に感心。
土中窯の一部。
田川産業の行平史門さん。
田川産業本社に建設中のショールームで。記念に背後の壁に少しずつ現代しっくいを塗らせてもらいました。
田島貝灰工業所では、まず敷地内に積まれた大量の白い貝殻に圧倒されます。田島秀樹さんが赤貝や牡蠣殻などを焼いてつくる石灰は、文化財などに使われています。
しかし近年赤貝が採れなくなり、近隣の環境、後継者の不在などの理由が重なり、「あと何年続くかな」という淡々とした田島さんのお話に、胸が苦しくなります。なんとか、続く方法が見つからないかと思います。
田島貝灰工業所
赤貝の山を背にする田島さん。飄々としたお話ぶりのなかにも、苦心と努力を重ねて工場を運営なさってきたことがうかがえます。
丸京石灰の方達と待ち合わせたのは、津久見市民会館。入江を挟んで丸京石灰工場あたりのプラント群が見えます。
それからセメント町1丁目やセメント町通りなどの地名をカメラに収めながら工場へ向かいます。コースや説明に工夫していただいたのが伝わります。
塩焼きという手法を守って製造方法は昔ながらですが、設備などは更新されていて現代的に思えました。
丸京石灰
丸京石灰の鳥越宣宏さん。
石灰石の投入口。塩加減などは職人技。
目の前の港から出荷します。
石灰会社3社はそれぞれ設備も雰囲気も異なりますが、共通していることがありました。自社の製品に強い自負を持ち、またそれにふさわしい研究・開発と努力を継続されていることです。
今後ともぜひ交流を続けたいと思います。行かないとわからないことは多いなと感じられた3日間でした。
超絶技巧の数々に一同、驚愕
荒木邸
研ぎ出し、洗い出しをはじめとする珠玉の左官技術に彩られた荒木富士男さんのご自邸。
一歩進むたびに、みんなから驚きと感嘆の声が。
24年前の復元と進行中の現場を見学
福岡城の下之橋大手門と潮見櫓
荒木富士男さんが復元した下之橋大手門。漆喰が光ってます。
潮見櫓の復元を担当したのは荒木新二さん。
建設中の潮見櫓。
藁を入れて寝かせている土。その藁が大量で、左官のみんなが驚いていました。
鰻に舌鼓、建築に満腹
柳川藩主立花邸御花
長い歴史を持つ御花では、柳川名物の鰻の蒸籠蒸しと西洋館や立派な庭園を楽しみました。
歴史ある湯治場の風情を楽しむ
鉄輪温泉
竹永さんが化学的な見地から左官材料をレクチャー。
温泉の噴気でなんでも蒸せる、地獄蒸し。